従来の薬化合物の設計としては、薬理効果を有する化合物に水溶性の置換基を付けることが一般的でした。ところが、抗がん治療に用いる薬剤の場合、水溶性化合物を静脈注射投与すると、血中に移行後、腎臓から濾過されやすい上、正常組織にも拡散しやすいこと、また、100nm 以上のマイクロ薬剤の場合は、マクロファージに貪食された後、肝臓に運ばれることが知られています(Fig.1)。
当該研究分野では、上記の課題を克服するため、抗がん活性薬化合物にコレステロール誘導体などの難水溶性置換基を化学的に連結することや2 量体化などを施すという従来とは真逆の薬剤設計を遂行することに加えて、有機ナノ粒子の作製法である再沈法を駆使することにより、100nm 以下のナノプロドラッグ(Fig.2)を作製する技術を確立しました。その結果、腫瘍組織の細胞内にまで効率的なドラッグデリバリーが可能な抗癌性ナノプロドラッグを創出できることや、本技術が点眼薬などにも幅広く応用展開できることが分かってきました。近い将来での実用化に向けて邁進中です。